皆さんこんにちは
草履とわらじって大体おんなじですが、ゾウリムシとワラジムシはだいぶん違いますね。両方ともその形から連想された名前ですが、生き物自体は大きさも分類も全く違います。
ゾウリムシはいわゆる原生動物で、水生の単細胞動物です。一方でワラジムシは節足動物の仲間でダンゴムシが平べったくなったような形の生き物です。ダンゴムシと勘違いした子供に無理やり丸めらる被害にあう虫です。
ゾウリムシ (wikipediaより)
ワラジムシ (wikipedia enより) |
ちなみにSlipper lobster(スリッパエビ? 和名は蝉エビ)というエビの仲間もいるようです。近縁種のゾウリエビは英語名をmitten lobster(手袋エビ?)というそうです。ややこしい。
僕は研究のためにゼブラフィッシュを飼育していますが、その飼育のためにゾウリムシも飼っています。ゼブラフィッシュの生まれたての仔魚はとても小さく、通常ペットショップで売っている魚用のパウダー餌でも大きすぎて食べることができません。
乳鉢ですりつぶしてみるものの、仔魚が食べられるくらいに小さくすりつぶすのはなかなか大変です。そこでゾウリムシの出番です。ゾウリムシは大きさが0.2mmくらいでちょうど仔魚の口の大きさに合うのでエサとしてよく使われます。
水槽にゾウリムシを放つと自然に増えて勝手に仔魚が食べてくれる・・・・と手がかからなくていいのですが、そううまくはいきません。少しは水槽の中で繁殖もするのでしょうが、エサとして与える十分な量を確保するためにはゾウリムシ自体を培養する必要があります。
ではゾウリムシのエサは何でしょうか。ゾウリムシには口(体の側面にある開口部)がありそこから餌を食胞として飲み込みます。そこに入る大きさでないといけないのでかなり小さなものになります。研究室ではKlebsiella pneumoniaeという細菌(環境中の常在菌)をあたえています。
山本漢方HPより |
ではKlebsiellaは何を食べているのでしょうか。こたえは大麦若葉です。厳密には大麦若葉の抽出液です。 食物連鎖をまとめると、
大麦若葉 → Klebsiella → ゾウリムシ → ゼブラフィッシュ
ゼブラフィッシュを育てたいだけなのに大麦若葉の抽出液から始めないといけないいう風桶方式です。ちなみにプロトコールはこんな感じです。
(1)大麦若葉を買う
大麦若葉粉末100% 170g アマゾンで買うと1200円くらい。研究費では買えなさそうなので自腹です。
(2)抽出液を作る
試薬ビンに水道水1Lくらいと大麦若葉を1袋混ぜ、オートクレーブ。
室温に冷ました後、上澄みを小さめの試薬ビンに200mLごとに小分けして念のためもう一度オートクレーブ(小分け時に空気中の雑菌が入るため)。底のほうの沈殿は入れない。
(3)ゾウリムシの培養液を作る
試薬ビンに水道水(オートクレーブしておく)800mL、大麦若葉抽出液100mL、すでに培養中のゾウリムシ培養液を100mLいれて静置。空気が入るように蓋は緩めておく。
*第1回目の培養開始時に Klebsiella pneumoniae を混ぜ、翌日にゾウリムシを入れる。
Klebsiella pneumoniae はここから(または勝手に混入して増えるという話もあります)、ゾウリムシはここから入手できます。ちなみにゾウリムシのエサはほかにもあるようです。強力わかもとでもよいらしい。
以降はこれを順々に植え継いでいきます。
(4)ゾウリムシをゼブラフィッシュに与える。
ゾウリムシ培養液をコーヒーフィルターで濃して集める。汲み置き水道水でゾウリムシを回収し仔魚に与える。
ゾウリムシを培養するときにはあいつの混入に注意です。気が付くとゾウリムシと一緒に結構増えてるのでそのまま仔魚に与えると逆に仔魚が食べられてしまいます。時々顕微鏡で確認しましょう。
ではまた。
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