Thursday, May 29, 2014

ゲルを固定する


今日は分子生物学分野、最大の問題と言われるあの問題について考えます。


そう、「ゲル浮き問題」です。

皆さんもこれまでの電気泳動で一度ならずゲルが浮いて泳動を失敗したことがあるのではないでしょうか。浮いたのをすぐに発見できればいいのですが他の実験をしていると戻ってきた時にはゲルが横向きになったまま泳動されて泳動方向が曲がったり、ひどい時はDNAがゲルの脇から流出してしまったりということも起こります。

目的のバンドの有る無しを確認する程度なら少々泳動像が曲がっていても問題ありませんが、きちんとDNAのサイズを測りたいときには泳動をやり直さないといけません。論文に使うためにきれいな泳動像が欲しい場合にもやり直しです。

残りのDNAサンプルが無いともう一度DNAの抽出を行ったりPCRなどの実験を行ったりしないといけないため大幅な時間の無駄になってしまいます。単純な失敗のためこれをやるとかなり脱力してしまいます。どうにかゲル浮き問題を回避する方法はないものでしょうか。

まずゲルが浮いてしまう原因を考えてみましょう。

根本的な原因はゲルがトレーから離れてしまうことです。トレーごと浮いてしまうことはあまり無いためトレーにさえしっかりゲルがくっついていれば浮くことはありません。しかしゲルがトレーから剥がれる機会は多々あります。

だいぶ横に流れている。でもまだ良いほう。

僕はよくゲルを節約するために必要なレーンの分だけゲルをカットして使います。切ったゲルはトレーから外し、別の空のトレーにのせて使います。作成直後はしっかりトレーについていたゲルも一度トレーから離すとゲルとトレーの間に水や空気が入るためトレーにしっかりと付かなくなりとても浮きやすくなります。

ゲルをカットせずそのまま使えばいいのですが、サンプルが少い時などは空いたレーンが無駄になります。電気泳動用のアガロースゲルはそれなりに高額なので節約しないといけません。対処としてゲルをトレーに少し押し付け前後にずらしてトレー間の水や空気を抜いて密着させるとよいのですが、あまりしっかりとくっついてはくれません。あまり押し付けすぎるとゲルが破壊されます。

もう一つの原因は泡です。

電気泳動中には泳動バッファーに浸った電極から細かい泡が発生します。この泡がゲルに付着したりトレーとの隙間に入って浮力を高めゲルを浮かべてしまいます。まれに泡がトレーと泳動槽の間に溜まることがあり、この場合はトレーごと浮いてずれてしまいます。

よく見ると、
とにかく泡がすごい。

電極からの泡はバッファーの電気分解による泡なので電気を通す限りこれを発生させない方法はありません。接着剤でトレーとゲルをくっつけるわけにもいかないので根本的な解決方法はありません。

したがって対処法は泡の発生量を少なくする方法と浮いたゲルをその場にとどめておく方法くらいに限られてきます。

では具体的な対策を考えていきましょう。

1つ目は低電圧で泳動する方法です。
電圧を低くすると泳動バッファー中に流れる電流が減るので電気分解を抑えて泡の発生量を減らすことができます。ただし電圧を下げると泳動時間が増えます。

ミューピッドなどのように付属のパワーサプライが低電圧と高電圧の2つしか選択できないような泳動装置では低電圧(50V)をつかいます。電圧等を自由に変更できるパワーサプライを使っている場合は泳動時間が長くなり過ぎない範囲で電圧を低くしていってちょうど良いところを見つけましょう。

しかしながら泳動をしているとバッファーの温度が上がりそれに伴い電流量が増えます。そうすると泡の発生量も増えてくるので注意しましょう。電流値を一定にできるパワーサプライを使っている人はちょうど良い電流値を見つければ泳動中の温度の上昇を抑えることができると思います。

2つ目は上の対策とも関連しますが低温で泳動する方法です。
低温で泳動を行えば電流量が減るので泡の量も減ります。あらかじめ泳動バッファーを冷蔵庫で冷やしたり、泳動槽ごと氷水を入れたタッパーにつけたりすれば低温で電気泳動が行えます。

しかしながらゲルの温度が不均一になるとゲル内での泳動度に差が出て泳動像が縦方向に曲がってしまいます。また氷水につける方法は結露などによって実験台に水がたまったりバッファー中に水や氷が入ったりと何かと問題が多いです。以前はミューピッドを上において冷やすことができる専用のクーラーが売られていましたが今はどうなんでしょう。

3つめはやったことがある人も多いと思います。
そう、つっかえ棒です。ゲルをつっかえ棒で固定して漂流しないようにする方法です。

チップを適当な長さに切る。

ピペッター用のチップが加工しやすいので良く使われるのではないでしょうか。
僕は上の写真のように加工しています。

とりあえず簡単な方法はチップを調度よい長さ(泳動槽の内縁からゲルまでの長さ)に切り、ゲルの前後を挟むようにしてセットします。これでもしゲルが浮いても前後に動けないので方向がずれることはありません。横方向の動きはゲルトレー両側の壁が防ぎます。

カットしたゲルを泳動する際にはもう少し工夫が入ります。前後の動きを止めても横に動いてしまうためゲルの横にせり出す形でつっかえ棒を作ります。

途中から縦に割る。
先ほどのチップに入れて使う。

チップの根本を1/3~真ん中くらいまで縦半分に切り取ります。これを先程と同様にカットしたチップに差し込んでゲルの真横に来るように泳動槽内にセットします。

これで前後左右をがっちりとガード。

片方だけセットすれば反対側はゲルトレーの壁があるのでゲルは動けません。ゲルの前後にもチップをセットして、これで前後と横方向の動きを抑えることができます。

ここまでやればゲルが漂流することはありません。安心して泳動しましょう。

残る1つのゲル関連の大問題、ウェル貫通でサンプル漏れ問題についてはまた別の機会に。

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