Thursday, November 20, 2014

PCRの原理

今回の更新はPCRの原理を示したYoutubeでの解説です。


わかりやすいので特にPCR実験を始めたばかりの学生さんにどうぞ。

今回はこれだけです。

Friday, October 31, 2014

救急救命講習会


皆さんは救命講習会を受けられたことがあるでしょうか?

昨日(31日)大学会館で消防署の方が来られて救命講習会がありました。この講習会は定期的に行われていて僕も以前から受けてみたかったのですが、やっと今日出席してきました。

講習会では心臓マッサージ(胸部を圧迫して心臓を押し、血液を循環させる)の方法とAED(自動体外式除細動器 Automated External Defibrillator)の使いかたを実際に体験しました。

Wednesday, October 22, 2014

フローサイトメトリー トレーニングコース 2日目


今日(22日)は昨日に引き続きトレーニングコースの第2日目をおこないました。

見学者として参加していただいた1名が増え、7名の参加者での実習となりました。

内容は前日と同じくSONYの三好さんによるフローサイトメトリーの概要説明、その後実験室での実習という流れで進みました。

白血球系の細胞をCD4-FITCとCD3-PE/Cy7抗体で染色して解析を行いました。冒頭の写真はセルソーターで解析した結果です。セルアナライザーでの結果は下の写真です。2日間とも、参加していただいた皆さんいずれもとても良い実験結果でした。

左上から未染色、CD3-FITC、CD4-PE/Cy7、共染色細胞。

参加していただいた方にはお分かりいただいたと思うのですが、当研究分野所有のフローサイトメーターは装置立ち上げ時の設定がほとんど全自動で行われるため操作が非常に楽になっています。

また利用者の皆さんに装置をスムーズに利用していただくため使用開始時に必要な溶液の点検等は予めゲノム研究分野スタッフが行うようにしています。どうぞどんどんご利用ください。

当日使用したプロトコールは→ こちら です。参考にしてみてください。

セルソーターとアナライザーのマニュアルはゲノム研究分野管理室でお配りしています。必要な方はご連絡ください。

ゲノム研究分野管理室
mgrc@gifu-u.ac.jp
内線 3171 まで。

Tuesday, October 21, 2014

フローサイトメトリー トレーニングコース 1日目


  

久しぶりの更新になってしまいました。
今日はトレーニングコースのお知らせです。

ゲノム研究分野では以前トレーニングコースとして実験操作の習得を目的とした実習を行っていました。数年間中断していたのですが、今年から再び定期的にトレーニングコースを行うことになりました。

トレニングコース再開の第一弾として今回はフローサイトメトリーの実習です。参加者入れ替わりで今日と明日の2日間行っています。午後1時から5時までの4時間のコースです。今日の第1日目は7人の方に参加いただきました。

当研究室で用意したフローサイトメトリー練習用の血球系細胞を細胞表面抗原を認識する緑と赤の2種類の蛍光抗体で染色し、当研究分野に共同利用機器として設置しているSONY社製のセルソーター(SH800)とセルアナライザー(EC800)で解析を行いました。

実習スケジュールでは、まず最初にSONYから来ていただいた担当者(三好さん)にフローサイトメトリーの概論とフローサイトメーターに関する説明を30分ほどしていただきました。その後は実習室で参加者の皆さんに細胞の染色操作を実際に行ってもらいました。

染色後はフローサイトメーターが設置してある3階の部屋に場所を移して、実際に装置を動かしてもらいながら染色した細胞の測定を行いました。

今回はFITCラベルのCD4抗体とPE/Cy7ラベルのCD3抗体を使いました。実験がうまく行けば両方の抗体で細胞が染色されることになります。

明日は第2日目を行います。6人の方が参加予定です。

トレーニングコースに関するお問い合せはゲノム研究分野管理室まで。
E-mail: mgrc@gifu-u.ac.jp または 内線: 3171。

(参考リンク → SONY セルソーター SH800 、 SONY EC800 セルアナライザー

Thursday, July 10, 2014

New England Biolabs


きまぐれメーカー案内 その1
New England Biolabs (NEB)

”N.E.B.! N.E.B.!”

分子生物学の実験には様々な試薬が必要になります。DNAを切ったり貼ったりするための制限酵素やライゲーション酵素、またはPCR反応を行うためのポリメラーゼなどなど、数え上げたらきりがないくらい色々な試薬を使います。皆さんの研究室の冷凍庫にもこれらの試薬がたくさんあると思います。

今回の記事では個人的に気になった試薬メーカーを気まぐれに紹介したいと思います。

Wednesday, June 11, 2014

コンピテントセルの作成




これまでにDNAの切り出しやT-ベクターへのライゲーション、プラスミドを取り込んだ大腸菌から直接PCRを行いインサートの長さをチェックする方法、などを説明してきました。

今回はプラスミドを取り込ませるための大腸菌、いわゆるコンピテントセル (competent cell)の作り方を紹介したいと思います。

Thursday, May 29, 2014

ゲルを固定する


今日は分子生物学分野、最大の問題と言われるあの問題について考えます。


そう、「ゲル浮き問題」です。

皆さんもこれまでの電気泳動で一度ならずゲルが浮いて泳動を失敗したことがあるのではないでしょうか。浮いたのをすぐに発見できればいいのですが他の実験をしていると戻ってきた時にはゲルが横向きになったまま泳動されて泳動方向が曲がったり、ひどい時はDNAがゲルの脇から流出してしまったりということも起こります。

目的のバンドの有る無しを確認する程度なら少々泳動像が曲がっていても問題ありませんが、きちんとDNAのサイズを測りたいときには泳動をやり直さないといけません。論文に使うためにきれいな泳動像が欲しい場合にもやり直しです。

残りのDNAサンプルが無いともう一度DNAの抽出を行ったりPCRなどの実験を行ったりしないといけないため大幅な時間の無駄になってしまいます。単純な失敗のためこれをやるとかなり脱力してしまいます。どうにかゲル浮き問題を回避する方法はないものでしょうか。

まずゲルが浮いてしまう原因を考えてみましょう。

Friday, April 25, 2014

SONY セルソーター アップグレード完了のお知らせ

以前お知らせしていたように2月21日からSONYセルソーターSH800がアップグレードのために一時ソニーの工場に引き取られていました。3月半ばにアップグレードを完了して戻ってきていたのですが、装置の調整や軽微な修理等で正式なアナウンスが遅れていましたが本日からまた通常通りお使いいただけます。

今回のアップグレードの内容は96穴プレートまでのマルチウェルプレートに対応したソーティング機構の追加です。これまでのコレクションチューブへのソーティングに加え、マルチウェルプレート内のウェルへ細胞を取得することが可能になりました。

96プレートをセットしたところ。このあと奥に移動し細胞がウェルに入る。

対応マルチプレートは6,12,24,48,96ウェルタイプのプレートです。 プレートを冷却しながらのソーティングも行えます。

培養液を満たしたマルチウェルプレートの各ウェルに 1細胞ずつ細胞を分取することもできるので細胞のクローニング用途にもご利用いただけます。分取した細胞はインキュベータへ持っていてそのまま培養できます(ゲノム研究分野では装置近くに細胞培養用のインキュベーターも設置していますので短期間の培養も行っていただけます)。

また専用台を使うことでPCRチューブにもソートできます。予め反応液を入れておけばそのままサーマルサイクラーに移してPCR反応を行うということも可能です。

PCRチューブにもソートできる。写真はPCRチューブを立てる専用台。
なぜかエッペンドルフ製。青いのは保冷剤。

これまでは2方向ソーティングに使うコレクションチューブを入れる台が装置内にセットしにくいという問題がありましたがこの不具合も解消されていますので、台がずれていたたために細胞がチューブ壁面にぶつかってしまうということもなくなると思います。

ちなみにマルチウェルプレートへのソーティング機構がついたことで本装置はSONY第2世代セルソーターとなり名前もSH800からSH800Zとなりました。なんかどこかで聞いたことがあるようなネーミングですね。

ゲノム研究分野ではなるべく早い時期に本装置の操作説明会を開く予定にしています。
後日お知らせしますのでぜひご参加ください。

Tuesday, April 15, 2014

PCR用酵素 その2



前回(PCR用酵素 その1)からの続きです。

PCR用酵素を4つのグループに分けて紹介しています。
後半の2グループです。

Monday, March 31, 2014

PCR用酵素 その1


皆さんはPCRを行うときにはどの酵素を使っていますか?
今日の記事はPCR用ポリメラーゼについてです。

PCR用ポリメラーゼは主に2つの種類に分かれます

1つ目はTaqポリメラーゼです。
TaqポリメラーゼはPCR用酵素の主力で最も広く使われています。
好熱細菌のThermus aquaticusから単離されたので頭文字部分をとってこの名前があります。
PCR法の開発初期に初めて採用された耐熱性ポリメラーゼもこのTaqポリメラーゼです。

Monday, March 17, 2014

Nichiryo ニチペット

なんだこれは。意外にいい。いやかなりいい。
盲点の日本製ピペッター ニチリョーニチペット


4回目のピペッター批評はその社名からパンを作っている会社かと思っていたら実は実験機器メーカーだったというニチリョーから販売されているピペッター、ニチペットが主役です。

(これまでのピペッター批評はこちら→

タイトルで今知ったみたいな書き方をしてしまいましたがニチペットを初めて見たのは15年くらい前です。

当時はギルソンのピペットマンだけが本物のピペッターと思っていたピペッター初心者だったので他の研究室にお邪魔してニチペットを借りて実験していた時にはほんとにちゃんと吸えているのかと疑っていました。

それ以後いろいろな研究室に行った際に時々ニチペットがあるのを見て、意外に持ってる人多いなーと思っていました。なぜか外国の研究室に行った時にもあって誰が買ったのだろうと思いつつも共通ピペッターだったので実験に使っていました。

しばらく使ってわかってきたのですが、本ピペッターは実によく考えて作られています。

Tuesday, March 11, 2014

顕微鏡の視度調整


ゲノム研究分野には顕微鏡がいくつかおいてあります。

以前紹介したLSM710、及びLSM510の2つの共焦点レーザー走査型顕微鏡(Carl Zeiss社製)、および正立型と倒立型の通常光型顕微鏡(倒立型は蛍光観察が可能)、実体顕微鏡(いずれもCarl Zeiss社製)が共同利用機器としてお使いいただけます。

共焦点レーザー走査型顕微鏡では観察者が肉眼で観察する機会は余りありませんが(サンプルの位置合わせくらい)それ以外の顕微鏡では実際に観察者がレンズを覗きながら長時間観察を行います。この時はまずはじめに接眼レンズを観察者自身の視力に合わせて調整する(視度調整と言います)必要があります。

今日はその視度調整の方法について説明します。

Wednesday, March 5, 2014

おすすめ論文紹介 - Novel Insect Picorna-Like Virus Identified in the Brains of Aggressive Worker Honeybees

前回の論文に引き続き今回もミツバチに関する論文を紹介します。

Title: Novel Insect Picorna-Like Virus Identified in the Brains of Aggressive Worker Honeybees
Tomoko Fujiyuki, Hideaki Takeuchi, Masato Ono, Seii Ohka, Tetsuhiko Sasaki, Akio Nomoto and Takeo Kubo
Journal of Virology Vol. 78, 1093-1100. 2004.

2004年の論文です。

前回の論文紹介ではニホンミツバチによるオオスズメバチの撃退法を取り上げました。
ニホンミツバチは巣を襲撃にきたオオスズメバチに対抗する手段として集団でオオスズメバチを包み込み自らが出す熱によってオオスズメバチを討ち取るというものでした。

この熱による攻撃はニホンミツバチのみが行う行動でありセイヨウミツバチは同じ手段で対抗することはできません。したがってオオスズメバチに襲撃されたセイヨウミツバチのコロニーは短時間のうちに全滅してしまいます。

自分たちの巣を襲われた際には巣を守る兵隊役の働き蜂はたとえ襲撃者がオオスズメバチであっても果敢に対抗します。セイヨウミツバチの攻撃手法はお尻の先にある毒針です。

Thursday, February 27, 2014

コロニーダイレクトPCR




これまでにゲルからのDNAの切り出しとT-ベクターへのクローニングの方法を説明してきました。

(参考リンク→T-Vectorを使ったサブクローニングライゲーションゲルからのDNAの切り出し

今日は形質転換した大腸菌からプラスミドを抽出せずにダイレクトにPCRを行い目的のDNAがベクターに入ったかどうかをチェックする方法を紹介します。

Tuesday, February 18, 2014

ピペッターの持ち方あれこれ

皆さんはどんなふうにピペッターを持っていますか?

人によって自然と持ちやすかったり疲れにくかったりする持ち方をしていると思います。
今日はピペッターの持ち方に関する考察をしたいと思います。
(そんなことに考察がいるか? と思われるかもしれませんが、お付き合いください。)

普通の握り方。

おそらくこれが最も普通の持ち方でしょう。ピペッターを手のひらに載せてそのまま握るとこうなります。
ほとんどのピペッターはこの持ち方をしたときに一番手にしっくりくるように設計してあると思います。

人差し指の上にせり出している本体の出っ張りがピストンを押したときにピペッター本体が押されて手からずり落ちないようにストッパーの役割を果たします。 ピペッターによってはここが傘の柄のようにカーブしていて、使わないときにピペッターをピペットハンガーなどに架けられるようになっています。

イジェクトボタンがやや押しづらい
難点としてはそのままだとややイジェクトボタンに届きづらいので手の中で少しピペッターをずらしてボタンを押しやすい位置に持ってくる必要があります。


さて、これが一番普通の持ち方といいましたが、僕はこの持ち方をしていません。

Wednesday, February 12, 2014

おすすめ論文紹介 - Unusual thermal defense by a honeybee against mass attack by hornets

今日は個人的に好きな論文を紹介します。

Title: Unusual thermal defense by a honeybee against mass attack by hornets
Authors: Masato Ono, Takeshi Igarashi, Eishi Ohno & Masami Sasaki
Nature Vol. 377, 334 - 336 (1995)



ニホンミツバチがオオスズメバチを撃退することができることについては知っている人も多いと思います。時々サイエンス系のテレビ番組などでも見かけることがあります。

ミツバチとオオスズメバチの体格差 攻撃力の差は歴然で30匹ほどのオオスズメバチがいれば3万匹のミツバチを数時間のうちに全滅させてしまうといいます。養蜂に使われるセイヨウミツバチはオオスズメバチの集団に襲われるとなすすべもなくやられてしまい、巣の中の幼虫や蛹などを食料として奪われてしまいます。

一方でニホンミツバチはオオスズメバチの大群にはかなわないものの、斥候として単独で偵察にやってきたオオスズメバチを大勢の働き蜂で打ち取ることで大群の襲来を未然に防ぎ、自分たちの巣を守ります。本論文は20年ほど前に書かれた論文で、上記のニホンミツバチの有名な習性と撃退のメカニズムを世界で初めて報告しました。

本文は刺激的な記述から始まります。

Thursday, February 6, 2014

エッペンドルフ リファレンス

ワンアクションで簡単操作のピペッター, eppendorf Reference

泣く子も黙る、純正エッペンドルフチューブ(サンプル)。

ピペッター批評3回目はドイツeppendorf社のマイクロピペッター 、Referenceを取り上げます。

(参考リンク→ピペッター批評1回目2回目)

特に理由はないけれど最初そうだったからなんとなく同じことを続けている、ということはよくあることだと思います。ほぼそれとおなじ感覚で僕はこのeppendorf社のピペッターをマイクロインジェクションで使うガラス針にDNAやRNAを注入するためだけに使っています。

Thursday, January 30, 2014

ゲルからのDNAの切り出し


複数の長さのDNAの混合物から特定の長さのものだけを分離したいときは電気泳動を行って目的の長さのバンドを泳動後のゲルから切り出して精製する必要があります。特に制限酵素処理後やPCR反応後に特定のDNAをプラスミドにサブクローニングしたいときなどはきちんと目的のバンドを電気泳動で分離して精製しておかないと目的外のDNAがプラスミドに入ってしまい実験がうまくいかないことが多々あります。

ゲルからDNAを精製する手順は結構手間なのですが急がばまわれ、面倒くさがらずにやりましょう。手順はおよそ次のようになります(タイトルの画像も参照してください)。

Thursday, January 23, 2014

セルソーターSONY SH800アップグレード!!




メーリングリストでゲノム研究分野からのお知らせを受け取っている方はもうご存知かもしれませんが、来月セルソーターSony SH800のアップグレードを行います。新しい装置の取り付け作業のため2月21日から3月14日までは本装置がお使いいただけません。ご不便をお掛けしますが、よろしくお願いします。

アップグレードの内容は現在の2方向ソーティングに加えて、96穴プレートへのソーティングを可能にするための装置の追加です。96穴プレートの1つ1つの穴に細胞を1個ずつ分取できるようになるのだそうです。(・・・まじか・・・・、すごいですね)。

96穴全てに同じ種類の細胞を分取してもよいのですが、数列ごとに異なる種類の細胞を分取したりも可能なようです。プレートにソーティングした細胞はそのまま培養してもよし、細胞1つずつからゲノムを抽出して解析をしてもよし、と色々と夢が広がります。

しかしながらディスポーザブルのフローセルを使ったり今回の96穴ソーティングをやったりとSonyのフローサイトメトリー部門はなかなか攻めてきますね。

ちょうど去年末の分子生物学会で96穴ソーティングのデモが行われていたのでソーティングが行われる様子を見てきました。デモ用のビーズか何かをソーティングしていたのだと思いますが、装置内で96穴プレートが器用に動いてキビキビと1つずつ分取していました。

よくデパートの食品売り場にあるまんじゅう屋さんなどで機械が次々にまんじゅうを作ったりしてますが、そういうのに出くわすと結構眺めてしまいます。デモで行われていた96穴ソーティングもそれに通じるものがあり、うまくソーティングを行うものだなとしばらく見入ってしまいました。

実際は細胞がたくさん入ったり全く入らなかったりするんじゃないのと疑ってSonyの人達に聞いてみたのですが、口々に「いや、ちゃんと1ウェルに1細胞ずつはいりますよ」と自信満々で答えられてしまいました。以前にも書きましたが、このSonyの自信はどこから来るのでしょうか。

Sonyの自信が本当かどうか是非皆さんに確かめていただきたいと思います。
アップグレード完了は3月中旬です。追って操作説明会も行います。

ご期待ください。


設置場所:ゲノム研究棟 3階 306号室

利用料金:500円/1使用+チップ代がかかります。

詳しくはゲノム研究分野 管理室まで (内線 3174、Eメール mgrc@gifu-u.ac.jp)     




Monday, January 20, 2014

フィンピペット


フィンピペットのフィンはフィンランドのフィン。

今日はピペッター批評の2回目です。前回のギルソンのピペットマンに続きまして今回は、Thermo Scientific社のフィンピペットを取り上げます。

始めに宣言しておくと、僕はフィンピペットのファンなので評価が良い方に偏ってしまいます。内容は話半分で聞いてください。

それでは始めましょう。

エントリーNo. 2
Thermo Scientific, Finnpipette

Sunday, January 12, 2014

GeneSpring & IPA

ゲノム研究分野 共同利用機器紹介-(7)

マイクロアレイの悩みはこれで解決する! GeneSpring & Ingenuity Pathways Analysis (IPA)

GeneSpring
IPA

マイクロアレイのデータ解析は頭を悩ませる実験の1つです。遺伝子の発現変動を見ようと受託解析などでデータは取ってみたものの発現が変動した遺伝子ばかりでどれが本当に注目に値する遺伝子なのか検討がつかない、という方も多いはず。今回紹介する2つのソフトウェアはそんな悩みを一発で解消してくれます。

GeneSpringはマイクロアレイデータ解析用のソフトです。アレイデータから精度の悪いスポットを取り除き、同一条件の複数検体のデータから各スポット(遺伝子発現量)の平均値を算出。他条件の検体データとの比較により条件間で変動したスポット(遺伝子)をリスト化してくれます。

更に簡単なオントロジー解析(どんな生理活性を持った遺伝子が発現変動しているか、どんなシグナル経路の遺伝子が変動しているかの解析)も行ってくれます。

一方のIPAはオントロジー解析、パスウェイ解析に特化したソフトです。GeneSpringで解析したデータを取り込み、変動した遺伝子が多く含まれるシグナル経路、生物学的機能を同定してくれます。更にそれらの遺伝子の上下関係(活性、抑制の別)を示した相互作用がわかるマップを作成してくれます。例えば薬剤を与えることでどのシグナル経路や生理機能に影響が出たかがグラフィカルなマップとともに判明します。

IPAはマイクロアレイのデータがなくても注目する遺伝子名や薬剤名を入力することでその遺伝子や薬剤が関わる経路(パスウェイ)を同様のマップで表示してくれます。遺伝子相互作用経路や代謝経路を勉強する上でもとてもよいツールです。

IPAで行う解析に使用される遺伝子間相互作用のデータベースはIPAを提供するIngenuity社の専門のスタッフ(PhD保持者)が論文を精査して作り上げていっていることから非常に信頼性が高く、遺伝子のみならず薬剤との相互作用データも含まれるため特定の経路に作用する薬剤の同定にも使用することができます。

バイオインフォマティクスにおけるパスウェイ解析の重要性は近年非常に高くなってきています。このことはIngenuity社が昨年買収によりQIAGENの一部門になったことからも伺うことができます。今後大きな資本を元に更にデータベースの充実が図られるものと予想されます。

GeneSpring、IPAを使った解析の流れは以下のようになります。

Thursday, January 9, 2014

実験医学増刊 生命分子を統合するRNA


ゲノム研究分野所蔵おすすめ書籍-羊土社 実験医学増刊 Vol.31-No.7 2013

生命分子を統合するRNA―その秘められた役割と制御機構


羊土社HPより
様々な種類のRNAについて最先端の研究をまとめたレビュー集.分子の性質や制御機構から,世代間シグナル,感染記憶,核内構造体構築,人工リボスイッチなどのRNAの知られていなかった機能に迫る総力特集! (羊土社広告より)


近年遺伝子として機能するいわゆるnon-cording RNA(ncRNA)についての知見が目覚ましい勢いで増えています。ほんの少し前までは遺伝子と言えばタンパク質を作るもの、というのがの常識でした。しかし現在の知見ではタンパク質に変換されるゲノム領域はほんの2%程度なのに対して実に80%のゲノム領域からnon-coding RNAは転写されているのです。

タンパク質にはならずにRNAの状態で機能するリボソームRNA(rRNA)やトランスファーRNA(tRNA)があることは高校の生物でも勉強しますし、セルフスプライシングを行う一部のリボザイム(RNA酵素)があることは知っている人も多いでしょう。

近年のRNA研究の進展により遺伝子として機能する新たなRNAが数多く発見されその数はタンパク質を作る遺伝子の数を凌駕するまでになりました。
本特集はいろいろな機能を持つncRNAについて最先端の研究を交えて解説してあります。

-目次-

第 1 章      分子進化から紐解く RNA の新機能
概論 現在の細胞から RNA 制御の進化を探る
1     tRNA の起源と生命の進化
2     RNA 複製システムにおける生きた分子化石
3     tRNA 修飾と機能―その基本機能から高次生命現象への拡張
4     リボソームの分子進化―A サイト RNA 分子スイッチの動きからの考察
5     2つの機能を有する tmRNA による細菌の翻訳停滞解消システム
6     実験進化・人工システム構築からみえてくるRNA/RNP の新機能
7     リボスイッチおよび抗プリオン活性を示すRNA アプタマーの動作メカニズム
8     グループⅠイントロン研究の新たな潮流―機能構造と分子進化

第 2 章      転移因子・ウイルスと宿主の“せめぎ合い”と遺伝子サイレンシング
概論 転移因子・ウイルスと宿主のせめぎ合いによりもたらされるゲノム進化
1     小分子 RNA を介したゲノム寄生因子と宿主ゲノムの攻防
2     小分子 RNA を介したゲノムレベルの自己と非自己の認識
3     RNA ウイルスの内在化と感染記憶
4     mRNA非翻訳領域のレトロトランスポゾン挿入配列による転写後遺伝子発現制御―潜在的な遺伝的変異の蓄積と表現型としての多様性の急激な解放

第 3 章      RNA に書き込まれた多様な情報
概論 生命分子を統合する RNA のもつ多様な情報と機能
1     U snRNP による遺伝子発現制御
2     RNAの長さに隠された秘密
3     翻訳伸長制御のメカニズムとその意義
4     遺伝病治療の基盤となる mRNA 品質管理の分子機構
5     microRNA の修飾とその機能―RNA 編集,メチル化,アデニル化,ウリジル化 
6     RNA エピジェネティクス
7     RNA の機能的多様性―mRNAとnon-coding RNAの境界点

第 4 章      RNA ― RNA,RNA ―タンパク質間相互作用
概論 non-coding    RNA エフェクター複合体の形成と機能―RNAとタンパク質の共同作業 
1     non-coding    RNA による核内構造体構築機構
2     microRNA はどのようにして標的mRNAを抑制するのか?
3     piRNA の生合成と機能―生殖組織外細胞における遺伝子発現制御の可能性
4     減数分裂の進行を制御するnon-coding RNA
5     長鎖 non-coding RNA による遺伝子発現・クロマチン修飾制御
6     小分子 RNA と世代間シグナル
索 引

目次を見ただけでも興味をそそられる内容となっています。200ページ以上あるので全部を読む時間がないという方は各章の概論だけでも読んでみると良いでしょう。

本特集を読むとRNAがいかに多様な生理機能を持っているかということが理解できます。また遺伝情報と生理機能の両方を併せ持つRNAが生命誕生の起源となったという仮説(RNAワールド仮説)がより信憑性の高いものだと考えさせられます。

ぜひおすすめの一冊です。ゲノム研究分野でも本雑誌の閲覧・貸出を行っています。興味のある方は是非どうぞ。


開架場所:ゲノム研究棟 2階廊下 西側突き当り

閲覧・貸出しは無料(ゲノム研究分野への登録が必要です)

詳しくはゲノム研究分野 管理室まで (内線 3174、Eメール mgrc@gifu-u.ac.jp)