ゲノム研究分野所蔵おすすめ書籍-羊土社 実験医学増刊 Vol.31-No.7 2013
生命分子を統合するRNA―その秘められた役割と制御機構
羊土社HPより |
近年遺伝子として機能するいわゆるnon-cording RNA(ncRNA)についての知見が目覚ましい勢いで増えています。ほんの少し前までは遺伝子と言えばタンパク質を作るもの、というのがの常識でした。しかし現在の知見ではタンパク質に変換されるゲノム領域はほんの2%程度なのに対して実に80%のゲノム領域からnon-coding RNAは転写されているのです。
タンパク質にはならずにRNAの状態で機能するリボソームRNA(rRNA)やトランスファーRNA(tRNA)があることは高校の生物でも勉強しますし、セルフスプライシングを行う一部のリボザイム(RNA酵素)があることは知っている人も多いでしょう。
近年のRNA研究の進展により遺伝子として機能する新たなRNAが数多く発見されその数はタンパク質を作る遺伝子の数を凌駕するまでになりました。
本特集はいろいろな機能を持つncRNAについて最先端の研究を交えて解説してあります。
-目次-
序第 1 章 分子進化から紐解く RNA の新機能
概論 現在の細胞から RNA 制御の進化を探る
1 tRNA の起源と生命の進化
2 RNA 複製システムにおける生きた分子化石
3 tRNA 修飾と機能―その基本機能から高次生命現象への拡張
4 リボソームの分子進化―A サイト RNA 分子スイッチの動きからの考察
5 2つの機能を有する tmRNA による細菌の翻訳停滞解消システム
6 実験進化・人工システム構築からみえてくるRNA/RNP の新機能
7 リボスイッチおよび抗プリオン活性を示すRNA アプタマーの動作メカニズム
8 グループⅠイントロン研究の新たな潮流―機能構造と分子進化
第 2 章 転移因子・ウイルスと宿主の“せめぎ合い”と遺伝子サイレンシング
概論 転移因子・ウイルスと宿主のせめぎ合いによりもたらされるゲノム進化
1 小分子 RNA を介したゲノム寄生因子と宿主ゲノムの攻防
2 小分子 RNA を介したゲノムレベルの自己と非自己の認識
3 RNA ウイルスの内在化と感染記憶
4 mRNA非翻訳領域のレトロトランスポゾン挿入配列による転写後遺伝子発現制御―潜在的な遺伝的変異の蓄積と表現型としての多様性の急激な解放
第 3 章 RNA に書き込まれた多様な情報
概論 生命分子を統合する RNA のもつ多様な情報と機能
1 U snRNP による遺伝子発現制御
2 RNAの長さに隠された秘密
3 翻訳伸長制御のメカニズムとその意義
4 遺伝病治療の基盤となる mRNA 品質管理の分子機構
5 microRNA の修飾とその機能―RNA 編集,メチル化,アデニル化,ウリジル化
6 RNA エピジェネティクス
7 RNA の機能的多様性―mRNAとnon-coding RNAの境界点
第 4 章 RNA ― RNA,RNA ―タンパク質間相互作用
概論 non-coding RNA エフェクター複合体の形成と機能―RNAとタンパク質の共同作業
1 non-coding RNA による核内構造体構築機構
2 microRNA はどのようにして標的mRNAを抑制するのか?
3 piRNA の生合成と機能―生殖組織外細胞における遺伝子発現制御の可能性
4 減数分裂の進行を制御するnon-coding RNA
5 長鎖 non-coding RNA による遺伝子発現・クロマチン修飾制御
6 小分子 RNA と世代間シグナル
索 引
目次を見ただけでも興味をそそられる内容となっています。200ページ以上あるので全部を読む時間がないという方は各章の概論だけでも読んでみると良いでしょう。
本特集を読むとRNAがいかに多様な生理機能を持っているかということが理解できます。また遺伝情報と生理機能の両方を併せ持つRNAが生命誕生の起源となったという仮説(RNAワールド仮説)がより信憑性の高いものだと考えさせられます。
ぜひおすすめの一冊です。ゲノム研究分野でも本雑誌の閲覧・貸出を行っています。興味のある方は是非どうぞ。
開架場所:ゲノム研究棟 2階廊下 西側突き当り
閲覧・貸出しは無料(ゲノム研究分野への登録が必要です)
詳しくはゲノム研究分野 管理室まで (内線 3174、Eメール mgrc@gifu-u.ac.jp)
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