Thursday, January 30, 2014

ゲルからのDNAの切り出し


複数の長さのDNAの混合物から特定の長さのものだけを分離したいときは電気泳動を行って目的の長さのバンドを泳動後のゲルから切り出して精製する必要があります。特に制限酵素処理後やPCR反応後に特定のDNAをプラスミドにサブクローニングしたいときなどはきちんと目的のバンドを電気泳動で分離して精製しておかないと目的外のDNAがプラスミドに入ってしまい実験がうまくいかないことが多々あります。

ゲルからDNAを精製する手順は結構手間なのですが急がばまわれ、面倒くさがらずにやりましょう。手順はおよそ次のようになります(タイトルの画像も参照してください)。

Thursday, January 23, 2014

セルソーターSONY SH800アップグレード!!




メーリングリストでゲノム研究分野からのお知らせを受け取っている方はもうご存知かもしれませんが、来月セルソーターSony SH800のアップグレードを行います。新しい装置の取り付け作業のため2月21日から3月14日までは本装置がお使いいただけません。ご不便をお掛けしますが、よろしくお願いします。

アップグレードの内容は現在の2方向ソーティングに加えて、96穴プレートへのソーティングを可能にするための装置の追加です。96穴プレートの1つ1つの穴に細胞を1個ずつ分取できるようになるのだそうです。(・・・まじか・・・・、すごいですね)。

96穴全てに同じ種類の細胞を分取してもよいのですが、数列ごとに異なる種類の細胞を分取したりも可能なようです。プレートにソーティングした細胞はそのまま培養してもよし、細胞1つずつからゲノムを抽出して解析をしてもよし、と色々と夢が広がります。

しかしながらディスポーザブルのフローセルを使ったり今回の96穴ソーティングをやったりとSonyのフローサイトメトリー部門はなかなか攻めてきますね。

ちょうど去年末の分子生物学会で96穴ソーティングのデモが行われていたのでソーティングが行われる様子を見てきました。デモ用のビーズか何かをソーティングしていたのだと思いますが、装置内で96穴プレートが器用に動いてキビキビと1つずつ分取していました。

よくデパートの食品売り場にあるまんじゅう屋さんなどで機械が次々にまんじゅうを作ったりしてますが、そういうのに出くわすと結構眺めてしまいます。デモで行われていた96穴ソーティングもそれに通じるものがあり、うまくソーティングを行うものだなとしばらく見入ってしまいました。

実際は細胞がたくさん入ったり全く入らなかったりするんじゃないのと疑ってSonyの人達に聞いてみたのですが、口々に「いや、ちゃんと1ウェルに1細胞ずつはいりますよ」と自信満々で答えられてしまいました。以前にも書きましたが、このSonyの自信はどこから来るのでしょうか。

Sonyの自信が本当かどうか是非皆さんに確かめていただきたいと思います。
アップグレード完了は3月中旬です。追って操作説明会も行います。

ご期待ください。


設置場所:ゲノム研究棟 3階 306号室

利用料金:500円/1使用+チップ代がかかります。

詳しくはゲノム研究分野 管理室まで (内線 3174、Eメール mgrc@gifu-u.ac.jp)     




Monday, January 20, 2014

フィンピペット


フィンピペットのフィンはフィンランドのフィン。

今日はピペッター批評の2回目です。前回のギルソンのピペットマンに続きまして今回は、Thermo Scientific社のフィンピペットを取り上げます。

始めに宣言しておくと、僕はフィンピペットのファンなので評価が良い方に偏ってしまいます。内容は話半分で聞いてください。

それでは始めましょう。

エントリーNo. 2
Thermo Scientific, Finnpipette

Sunday, January 12, 2014

GeneSpring & IPA

ゲノム研究分野 共同利用機器紹介-(7)

マイクロアレイの悩みはこれで解決する! GeneSpring & Ingenuity Pathways Analysis (IPA)

GeneSpring
IPA

マイクロアレイのデータ解析は頭を悩ませる実験の1つです。遺伝子の発現変動を見ようと受託解析などでデータは取ってみたものの発現が変動した遺伝子ばかりでどれが本当に注目に値する遺伝子なのか検討がつかない、という方も多いはず。今回紹介する2つのソフトウェアはそんな悩みを一発で解消してくれます。

GeneSpringはマイクロアレイデータ解析用のソフトです。アレイデータから精度の悪いスポットを取り除き、同一条件の複数検体のデータから各スポット(遺伝子発現量)の平均値を算出。他条件の検体データとの比較により条件間で変動したスポット(遺伝子)をリスト化してくれます。

更に簡単なオントロジー解析(どんな生理活性を持った遺伝子が発現変動しているか、どんなシグナル経路の遺伝子が変動しているかの解析)も行ってくれます。

一方のIPAはオントロジー解析、パスウェイ解析に特化したソフトです。GeneSpringで解析したデータを取り込み、変動した遺伝子が多く含まれるシグナル経路、生物学的機能を同定してくれます。更にそれらの遺伝子の上下関係(活性、抑制の別)を示した相互作用がわかるマップを作成してくれます。例えば薬剤を与えることでどのシグナル経路や生理機能に影響が出たかがグラフィカルなマップとともに判明します。

IPAはマイクロアレイのデータがなくても注目する遺伝子名や薬剤名を入力することでその遺伝子や薬剤が関わる経路(パスウェイ)を同様のマップで表示してくれます。遺伝子相互作用経路や代謝経路を勉強する上でもとてもよいツールです。

IPAで行う解析に使用される遺伝子間相互作用のデータベースはIPAを提供するIngenuity社の専門のスタッフ(PhD保持者)が論文を精査して作り上げていっていることから非常に信頼性が高く、遺伝子のみならず薬剤との相互作用データも含まれるため特定の経路に作用する薬剤の同定にも使用することができます。

バイオインフォマティクスにおけるパスウェイ解析の重要性は近年非常に高くなってきています。このことはIngenuity社が昨年買収によりQIAGENの一部門になったことからも伺うことができます。今後大きな資本を元に更にデータベースの充実が図られるものと予想されます。

GeneSpring、IPAを使った解析の流れは以下のようになります。

Thursday, January 9, 2014

実験医学増刊 生命分子を統合するRNA


ゲノム研究分野所蔵おすすめ書籍-羊土社 実験医学増刊 Vol.31-No.7 2013

生命分子を統合するRNA―その秘められた役割と制御機構


羊土社HPより
様々な種類のRNAについて最先端の研究をまとめたレビュー集.分子の性質や制御機構から,世代間シグナル,感染記憶,核内構造体構築,人工リボスイッチなどのRNAの知られていなかった機能に迫る総力特集! (羊土社広告より)


近年遺伝子として機能するいわゆるnon-cording RNA(ncRNA)についての知見が目覚ましい勢いで増えています。ほんの少し前までは遺伝子と言えばタンパク質を作るもの、というのがの常識でした。しかし現在の知見ではタンパク質に変換されるゲノム領域はほんの2%程度なのに対して実に80%のゲノム領域からnon-coding RNAは転写されているのです。

タンパク質にはならずにRNAの状態で機能するリボソームRNA(rRNA)やトランスファーRNA(tRNA)があることは高校の生物でも勉強しますし、セルフスプライシングを行う一部のリボザイム(RNA酵素)があることは知っている人も多いでしょう。

近年のRNA研究の進展により遺伝子として機能する新たなRNAが数多く発見されその数はタンパク質を作る遺伝子の数を凌駕するまでになりました。
本特集はいろいろな機能を持つncRNAについて最先端の研究を交えて解説してあります。

-目次-

第 1 章      分子進化から紐解く RNA の新機能
概論 現在の細胞から RNA 制御の進化を探る
1     tRNA の起源と生命の進化
2     RNA 複製システムにおける生きた分子化石
3     tRNA 修飾と機能―その基本機能から高次生命現象への拡張
4     リボソームの分子進化―A サイト RNA 分子スイッチの動きからの考察
5     2つの機能を有する tmRNA による細菌の翻訳停滞解消システム
6     実験進化・人工システム構築からみえてくるRNA/RNP の新機能
7     リボスイッチおよび抗プリオン活性を示すRNA アプタマーの動作メカニズム
8     グループⅠイントロン研究の新たな潮流―機能構造と分子進化

第 2 章      転移因子・ウイルスと宿主の“せめぎ合い”と遺伝子サイレンシング
概論 転移因子・ウイルスと宿主のせめぎ合いによりもたらされるゲノム進化
1     小分子 RNA を介したゲノム寄生因子と宿主ゲノムの攻防
2     小分子 RNA を介したゲノムレベルの自己と非自己の認識
3     RNA ウイルスの内在化と感染記憶
4     mRNA非翻訳領域のレトロトランスポゾン挿入配列による転写後遺伝子発現制御―潜在的な遺伝的変異の蓄積と表現型としての多様性の急激な解放

第 3 章      RNA に書き込まれた多様な情報
概論 生命分子を統合する RNA のもつ多様な情報と機能
1     U snRNP による遺伝子発現制御
2     RNAの長さに隠された秘密
3     翻訳伸長制御のメカニズムとその意義
4     遺伝病治療の基盤となる mRNA 品質管理の分子機構
5     microRNA の修飾とその機能―RNA 編集,メチル化,アデニル化,ウリジル化 
6     RNA エピジェネティクス
7     RNA の機能的多様性―mRNAとnon-coding RNAの境界点

第 4 章      RNA ― RNA,RNA ―タンパク質間相互作用
概論 non-coding    RNA エフェクター複合体の形成と機能―RNAとタンパク質の共同作業 
1     non-coding    RNA による核内構造体構築機構
2     microRNA はどのようにして標的mRNAを抑制するのか?
3     piRNA の生合成と機能―生殖組織外細胞における遺伝子発現制御の可能性
4     減数分裂の進行を制御するnon-coding RNA
5     長鎖 non-coding RNA による遺伝子発現・クロマチン修飾制御
6     小分子 RNA と世代間シグナル
索 引

目次を見ただけでも興味をそそられる内容となっています。200ページ以上あるので全部を読む時間がないという方は各章の概論だけでも読んでみると良いでしょう。

本特集を読むとRNAがいかに多様な生理機能を持っているかということが理解できます。また遺伝情報と生理機能の両方を併せ持つRNAが生命誕生の起源となったという仮説(RNAワールド仮説)がより信憑性の高いものだと考えさせられます。

ぜひおすすめの一冊です。ゲノム研究分野でも本雑誌の閲覧・貸出を行っています。興味のある方は是非どうぞ。


開架場所:ゲノム研究棟 2階廊下 西側突き当り

閲覧・貸出しは無料(ゲノム研究分野への登録が必要です)

詳しくはゲノム研究分野 管理室まで (内線 3174、Eメール mgrc@gifu-u.ac.jp)