ゲノム研究分野 共同利用機器紹介-(7)
マイクロアレイの悩みはこれで解決する! GeneSpring & Ingenuity Pathways Analysis (IPA)GeneSpring |
IPA |
マイクロアレイのデータ解析は頭を悩ませる実験の1つです。遺伝子の発現変動を見ようと受託解析などでデータは取ってみたものの発現が変動した遺伝子ばかりでどれが本当に注目に値する遺伝子なのか検討がつかない、という方も多いはず。今回紹介する2つのソフトウェアはそんな悩みを一発で解消してくれます。
GeneSpringはマイクロアレイデータ解析用のソフトです。アレイデータから精度の悪いスポットを取り除き、同一条件の複数検体のデータから各スポット(遺伝子発現量)の平均値を算出。他条件の検体データとの比較により条件間で変動したスポット(遺伝子)をリスト化してくれます。
更に簡単なオントロジー解析(どんな生理活性を持った遺伝子が発現変動しているか、どんなシグナル経路の遺伝子が変動しているかの解析)も行ってくれます。
一方のIPAはオントロジー解析、パスウェイ解析に特化したソフトです。GeneSpringで解析したデータを取り込み、変動した遺伝子が多く含まれるシグナル経路、生物学的機能を同定してくれます。更にそれらの遺伝子の上下関係(活性、抑制の別)を示した相互作用がわかるマップを作成してくれます。例えば薬剤を与えることでどのシグナル経路や生理機能に影響が出たかがグラフィカルなマップとともに判明します。
IPAはマイクロアレイのデータがなくても注目する遺伝子名や薬剤名を入力することでその遺伝子や薬剤が関わる経路(パスウェイ)を同様のマップで表示してくれます。遺伝子相互作用経路や代謝経路を勉強する上でもとてもよいツールです。
IPAで行う解析に使用される遺伝子間相互作用のデータベースはIPAを提供するIngenuity社の専門のスタッフ(PhD保持者)が論文を精査して作り上げていっていることから非常に信頼性が高く、遺伝子のみならず薬剤との相互作用データも含まれるため特定の経路に作用する薬剤の同定にも使用することができます。
バイオインフォマティクスにおけるパスウェイ解析の重要性は近年非常に高くなってきています。このことはIngenuity社が昨年買収によりQIAGENの一部門になったことからも伺うことができます。今後大きな資本を元に更にデータベースの充実が図られるものと予想されます。
GeneSpring、IPAを使った解析の流れは以下のようになります。
(1) マイクロアレイを使って遺伝子発現データを取得(これは各自で行います)。
(2) アレイデータをGeneSpringに読み込み。各スポットのクオリティーチェックを行って精度の悪いデータを排除。検体を条件の異なるのグループごとに平均化。
(3) 各条件間で発現に大きな差のある遺伝子を抽出(例えば2倍以上変動した遺伝子を抽出します)。
(4) GeneSpringのデータをExcel形式に変換。IPAで読み込みます。
(5) IPAが発現に変動のあった遺伝子を生物学的機能や代謝経路、シグナル経路等にグループ化します。
(6) どんな生物学的機能、代謝経路、シグナル経路が主に変動したかがグラフィカルなタイルマップ、及び相互作用マップとして表示されます。
(7) 変動のあった経路に影響を与える他の遺伝子、タンパク、薬剤等を同定することができます。
(8) 各経路を構成する因子間の相互作用を表した経路マップを描画できます。お好みで細胞核、細胞膜、各細胞内小器官を背景にしたマップを描くこともできます。それらのマップは論文内で使用できます。
マイクロアレイで遺伝子の発現変動解析を行う場合はn数に注意しましょう。例えば薬剤を投与して一定時間ごとの発現変化を見たい場合はそれぞれの時間で少なくとも3検体(できれば4検体)が必要です。1検体だけで実験を行っても統計学的に有意なデータになりません。
投与前(0時間)も含めて3点での比較をする場合は3(点) x 4 (検体) = 12のアレイデータが必要となります(同じディッシュで培養した細胞を4等分するのではなく4枚のディッシュからそれぞれRNAを抽出します。つまり合計12枚のディッシュが必要となります。)。
薬剤投与前、投与後の2点間の比較でも 2 x 4 = 8のアレイデータ(とディッシュ)が必要となります。マイクロアレイスライドはかなり高額なので実験結果が無駄にならないよう実験を始める前にしっかりと計画を立てましょう。
ゲノム研究分野ではAgilent社のマイクロアレイスキャナーが共同利用機器としてお使いいただけます。
現在ちょうど年度末キャンペーン中のようです。(今回のキャンペーンは1月20日までみたいです。購入はお早めに!→リンク)
設置場所:Genespring, IPAはゲノム研究棟 1階 102(情報処理室)、マイクロアレイリーダーは2階 202 です。
利用料金:GeneSpring, IPAともに無料です(マイクロアレイリーダーは1000円/1スキャン)。
詳しくはゲノム研究分野 管理室まで (内線 3174、Eメール mgrc@gifu-u.ac.jp)
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