Tuesday, March 26, 2019

B-vector


こんにちは。みなさんはblunt-end cloningどうしてます?

Proof-reading (校正) 活性のあるポリメラーゼを使ったPCR産物はTaqポリメラーゼと違って末端にA突出がなく平滑末端になっています。そのためベクターとのライゲーションはTAクローニングではなくblunt-endクローニングになります。これがむずかしい。

自作でblunt-end用のベクターをつくっている人もいると思いますが、どうでしょう。
入らざること山の如しですよね。

僕も自作でblunt-end用ベクター(僕は勝手にB-ベクターと呼んでいます)をつくってトライするのですがきちんと入ったことがほぼありません。

ちなみに定法に従い次のように作っていました。

(以下はあまりworkしないB-vectorの作り方です。参考になりません。)
 ベクターを平滑末端を生じる制限酵素(EcoRVやSmaIなど)でカット。
 ゲル電気泳動後、ゲル片からのDNA精製を行い切れたベクターのみを回収。
 回収産物をアルカリフォスファターゼ (SAPやCIAP) で処理し、末端のリン酸基を除去(ベクター末端同士のセ ルフライゲーションを防ぐため)。
 精製後小分けして冷凍保存。

白コロニーは出るが目的のDNAは入っていなかった。なぜかベクターが削れてつながっているもの多し。

何度きちんと作ってもつながらないのでいつもPCR産物側をさらに処理してTAクローニングに逃げていました。 また、高いのですがInvitrogen (Thermo FisherScientific) のTOPO cloning kitも使ったことがあります。

Blunt-end用のTOPO kitは目をつぶってやっても入るんじゃないかというくらいバシバシ入ってくれるのですが、いかんせん高い(1回のクローニングで3500円くらいかかる)。もはやそんな豪遊はできないので何とかできないかとずっと思いつつ毎回苦労していました。

そして先日久しぶりにblunt-endクローニングをやってみたのですが、またもや入らないので今度こそはと解決策をいろいろ考えた結果、結論が出ました。そしてそれなりにうまくつながる方法が分かったので紹介します。



以下のようにB-vectorを作成し、ライゲーションを行います。今回はプラスミドとしてpBluescriptII SK+を使っています。

[B-vectror preparation]
Step1: 制限酵素処理 (1.5mLチューブに調整)
 pBluescriptII SK+ 3μg
 Buffer H (TAKARA) 15μL
 EcoRV (TAKARA) 5μL
 ddH2O up to 150μL

 37℃で 3~5hr インキュベート。
 次に80℃で30分間処理し酵素を不活性化する。
 続けてカラム精製を行います。

Step2: カラム精製 (以下はNucleospinカラムを使用した例です)
 Vector-enzyme solution 150μL.
 Add Buffer NT 300μL.
 Mix well and transfer to a column.
 Spin at 11,000rpm (11,000 xg) 15sec. Discard elute.

 Add 750μL of Buffer NT3 (wash buffer).
 Spin at 11,000rpm 15sec.
 Repeat this washing step again (Buffer NT3 and spin).
 Spin at 11,000rpm for 2min to dry up the membrane of the column.

 Place the column to a new 1.5mL tube.
 Add 150μL of Buffer NE (elution buffer).
 Stand for 2min then spin at 11,000rpm for 2min.
 Aliquot the elute 2 ~ 10μL each in PCR tubes (0.2mL tube).
 Store at -20℃ until use.
 全部回収できていれば20ng/μLのベクター濃度になっているはず。

これだけです。
アルカリフォスファターゼ処理もゲルからの切り出しもしません。なるべく何もせず、ただ切って精製するだけのほうがいいのではないかという結論です。

セルフライゲーションが高頻度で起こってしまうので、Blunt-end cloningの時はストックしておいた上記のB-vectorを500倍希釈くらいに薄めて使います。ベクターの濃度は40pg/μLくらいになると思われます。

またライゲーションに用いるPCR産物は電気泳動後、目的のバンドをゲルから切り出して精製しておきます。

以下が手順です。ちなみにここからのやり方は基本的に以前紹介したTAクローニングと同じです。

[Blunt-end cloning with B-vector]
Step1: Preparation 
 Dilute B-vector with 5~10mM Tris-HCl or Buffer NE (1:500).
 (ストックしてあるB-ベクターを500分の1に薄めます。)

 Make "Ligation premix" as follows (1.5mLチューブに以下を作成。1反応当たりの必要量です。):
  2X Quick ligation buffer (NEB) 2.5μL
  T4 DNA ligase (any brand) 0.25μL
  Total 2.75μL
 Mix well by pipetting.


Step2: Ligation
 PCR product (purified from gel) 2.0μL
 Diluted B-vector 0.5μL
 Ligation premix 2.5μL
 Total 5.0μL
 Mix well and incubate at room temperature for 15min.
 Chill on ice (Do NOT heat-inactivate T4 ligase).
 (Proceed to transformation.)

この後はお好きな方法で大腸菌に入れて寒天プレート上でコロニーを形成させます 。カラーセレクションを行って白コロニーをピックアップし、コロニーダイレクトPCRなどで入ったかどうかのチェックを行います。


白もまあまあある。

ちなみにこんな感じになります。青コロニー(インサートなし)が多いですが、白コロニー(インサートあり)も結構あります。


まあまあ入っている。      

コロニーダイレクトPCRの結果はこんな感じです。



重要な点は3点あります。
(1)インサートDNAは必ず電気泳動で目的のバンドを分離し回収します。これを行わないと目的外の短いDNAフラグメントが挿入されることが多くなります。

(2)B-ベクターは濃くしすぎない。上に書いたようにB-ベクターは必ず500倍程度に薄めてから使います。使用するコンピテントセルの効率によっては少し調整する必要がありますが、濃くしすぎるとベクター同士のライゲーション頻度や、セルフライゲーションしたプラスミドが多くなるので目的のDNAが入ったプラスミド(を持ったコロニー)の割合が減ります。

考え方としては、ベクターの濃度を薄くしてベクター同士のライゲーションを減らし、相対的に目的DNAの濃度を濃くすることでベクターと目的DNAのライゲーション頻度を増やす感じです。

これを2Xになるように水で薄めてストックしておくと使いやすい。

(3)また、ライゲーションに使うT4リガーゼはどのメーカーのものでもいいのですが、バッファーはNEBの2X Quick Ligation Bufferを使いましょう。以前も書きましたが、このバッファーはNEBのQuick Ligaseを買うと付いてくるのですが、バッファーのみ (5X濃度) でも買えるので今はそれを2Xに薄めてストックして使っています。→ これ (リンク1) (リンク2)。

ちなみにB-ベクターを実際に使う薄い濃度でストックしないのはチューブへの吸着によってベクターが失なわれるのを防ぐためです。

今のところこれが自作ベクターでblunt-endクローニングを行う最良の方法のような気がします。予算が潤沢にある場合には無理せずTOPO kitを買ってもらったほうがいいですが、この方法もよかったら試してみてください。

ちなみにB-vectorの薄め方が足りないとこんな風にブルーコロニーだらけになります。それでもがんばって白コロニーを見つければそれなりに目的のものが入っている。




ご質問はゲノム研究分野まで。
内線: 3171
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