Thursday, April 18, 2019

PCRを使った変異/キメラコンストラクトの作成(前編)


 遺伝子の機能を解析するために特定の塩基を変更したり取り除いたりしてアミノ酸置換やフレームシフトを誘導してその影響を調べたいことがあります。


あるいは対象とする遺伝子とGFPの遺伝子をつなげて融合タンパクを作って細胞内局在を見たいといったこともよくあります。

今回はPCRで遺伝子変異の誘導や融合遺伝子の作成を行う手順を紹介します。
材料となる遺伝子のcDNAは得られているものとします。




(オプション)
もし対象とする遺伝子のcDNAがまだない場合にはまず以下の方法でcDNAをクローニングします(あるいは持っている人からもらってください)。

開始コドンから終止コドンまでつまりコーディング配列をクローニングする場合には開始コドンを含む20ー25塩基と終止コドンを含む20ー25塩基をプライマーとします。そうでない場合は適宜目的の配列に合わせてプライマーを設計してください。

Q5ポリメラーゼおすすめなどのハイフィデリティー酵素でPCRを行います。

アガロース電気泳動で増幅を確認後、PCR産物をカラム精製し、ベクターにクローニングします。詳細は以前の投稿を参照してください。

PCRエラーがないかどうかをDNAシークエンスで確認しておきます。

本実験の手順



図のように遺伝子の途中に塩基置換欠失挿入を行うと想定します。あるいは図の部分で任意の遺伝子とGFPをつなぐ(キメラ遺伝子を作る)ことを想定して進めます。

先ずは2組のプライマーを用意して2種類のフラグメントに分けてPCRを行います。この時変異を導入する部分 (またはキメラ遺伝子のつなぎ目)の部分にプライマーを2種類設計します。この2種類のプライマーの中の配列は下の図のように変異が導入された配列(またはGFPとのキメラ配列)にします。




1st PCR
まずはそれぞれのプライマーセット(Fragment A-Forward primer + Fragment A-Reverse primerの組 及び Fragment B-Forward primer + Fragment B-Reverse primerの組)で1st PCRを行います。テンプレートはあらかじめ用意しておいた遺伝子(精製したDNA)を使います。

注意点は校正活性の高いポリメラーゼ(オプションの項目に示したQ5ポリメラーゼや、KODポリメラーゼ、Pfuポリメラーゼなど)を 使ってはいけません。

プライマー内のミスマッチ部分が修復されて、変異を入れたはずなのに元の配列と同じものが増えてしまいます。キメラにするときも末端が削れたり変な増え方をすることがあります。

普通のTapポリメラーゼでもいいのですが、少しだけ正確性を上げたいので、ここはいわゆるブレンドタイプのTaqポリメラーゼを使います。これは通常のTaqポリメラーゼに校正活性を持つポリメラーゼを少し混ぜて最適化したものです。普通のTaqポリメラーゼを使うよりも3倍くらいは正確性が上がります。

ブレンドタイプのTaqポリメラーゼにはTakaraのEx TaqやNEBのOne Taqポリメラーゼ、TOYOBOのBlend Taqポリメラーゼなどがあります。どれでもいいです。今回はNEBのOne Taqを使った例です。



ddH2O 32.8


5x One Taq buffer 10.0


dNTP mix (2.5mM each) 4.0


10μM Forward primer 1.0


10μM Reverse primer 1.0


Template DNA (66ng/μL) 1.0   (final 1.32ng/μL)
  One Tap polymerase (NEB) 0.25    

Total 50.0   (μL)

テンプレートは大体0.02pmolが反応液に入るように濃度を調整する。今回はベクター(3kb)とインサート(2.2kb)合わせて約5.2kbのプラスミドをテンプレートとして用いました。66ngで大体0.02pmolになります。

以下の条件でPCR反応をかけます。PCRエラーによる目的外の変異が入らないように5サイクルだけ反応を行います。多量のテンプレートを入れているので5サイクルくらいでもPCR産物がある程度増えてきます。



Initial denaturing 94℃ 30 sec




Chain reaction (5 cycles) 94℃ 30 sec


X℃ 30 sec


68℃ Y sec




Final extension 68℃ 5 min




Hold 4-12℃

*XやYの項目は使用するプライマーやポリメラーゼにより異なります。

 結果はこんな感じになります(PCR産物を5μL電気泳動)。今回の実験はFragment Aが0.5kb、Fragment Bが1.7kb、それらがつながったものが2.2kbになるように設計してあります。

テンプレート量が多いのでPCR産物よりも濃く染まっている。ゲルから切り出すときは目的のバンドと間違わないように注意。
 
チェックした残りのPCR産物をカラム精製後(15μLで溶出)、全量をゲル電気泳動で分離し、目的のバンド2つを切り出します。切り出した後はゲルからのDNA精製を行い、20μLの溶出バッファー(キットに付属のものや5-10mM Tris-HCl)に溶かしておきます。これらについては以前の投稿を参考にしてください。(参考リンク→ ゲルからのDNAの切り出し

*PCR産物は必ず切り出します。そうしないと続く2nd PCRで1st PCRのテンプレートからPCRがかかってしまいます。

次回に続きます。


ご質問はゲノム研究分野まで。
内線: 3171
e-mail: mgrc@gifu-u.ac.jp

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