Tuesday, December 24, 2013

ライゲーション



DNAのライゲーションはうまく行くときは行くし、うまくいかない時は何故かうまくいかないという場合がよくあります。

ライゲーションには主にT4 DNA Ligaseを使います。メーカーによっては効率を上げるためにバッファーを工夫していたり、より簡便な操作のためにマスターミックスとしてバッファーと酵素が予め混合された製品を販売している場合もあります。T4 Ligase以外ではトポイソメラーゼをベクターに付けてライゲーションを行うキットも有ります。

どのメーカーの酵素を使うかはそれぞれの人の好みによるところが大きいです。うまくライゲーション反応が起こればそのメーカーの製品を買い続ける事が多いので、うまく行かなくなるリスクを取って他のメーカーの製品に乗り換えることは少ないでしょう。一方でうまくいかない時は他のメーカーの製品を幾つか試すことになるため、冷凍庫の中に複数のメーカーの製品を持っている研究室も多いと思います。

僕はNew England Biolabs(NEB)社のライゲーション酵素を使っています。NEBの製品は価格が比較的安く、品質も安定していると思います。他のメーカーの製品を使っていた時はLot差があったり保存中に活性が大きく下がったりする事がありました。Ligaseは結構不安定な酵素なのかもしれません。

今回は個人的によく使っているLigaseとT-ベクターへのPCR産物ライゲーション反応のプロトコールの紹介です。


反応前の準備として予めPCR産物は電気泳動を行って目的のバンドのみを切り出して精製しておきます。PCR反応後のチェックで目的のPCR産物のみしか増えていないように見える時でも、ゲル上では検出できない目的外のDNAが増えていることがあります。

特に短いDNA断片はゲル上の染色が薄くてもモル数では結構多いため優先的にライゲーションされてしまい目的PCR産物のライゲーションが妨げられます。面倒でも目的のDNAをゲルから切り出して精製しておくことをおすすめします。別の機会に切り出しを簡単に行う方法を紹介します。
(参考リンク → ゲルからのDNAの切り出し

ゲル上の1本のDNAバンドを切り出して精製し10uL程の水または10uM Tris-HCl (pH.8.0)に溶かしておきます(キットで精製した場合は付属のElution Bufferで溶かしておきます)。

以下は全てT-Vector 3kbにPCR産物 1kbを挿入する場合です。
(参考リンク → T-Vectorを使ったサブクローニング

T4 DNA Ligase
一般的なDNA Ligaseです。添付の10倍濃度のバッファーで希釈して使います。

[試薬]
     T4 ligase (NEB)
     10x ligase buffer (NEB)
     T-vector
     PCR 産物(精製したもの)

[Ligation反応]
     1.5mL tube (PCRチューブでもよい)に調整
     T-Vector (100ng/uL)      1
     DNA                              5
     10x buffer                       1
     H2O                            2.5
     T4 ligase                     0.5
                                                         
     TOTAL              10 (microL)

よく混ぜた後、室温で 1時間反応させる
(16℃で数時間~オーバーナイトで反応させても良いですが僕は面倒なので室温1時間で行っています。)

65℃ 20分間処理して酵素を失活させる
氷上に置いて冷ます。
 

コンピテントセルに加えて形質転換を行う

※DNAはベクターの3倍以上のモル数になるように調整します。ゲル上である程度きちん
と染まっているバンドを切り出して精製し10uLに溶解して半分を実験に用いれば大体そ
れくらいの量になるのできちんと測る必要はありません。

十分なPCR産物がある場合にはこれでいいと思います。PCR産物が少ない場合や長い場合、時
間を節約したい時には以下を試しましょう。

Quick Ligase
ライゲーション反応を迅速に行えると謳った製品です。反応は以下の通り。

[試薬]
     Quick Ligase (NEB)
     2x Quick Ligase buffer (NEB)
     T-vector
     PCR 産物 (精製したもの)

[Ligation反応]
  1.5mL tube (PCRチューブでもよい)に調整 
     T-Vector (100ng/uL)        0.5 ~ 1
     DNA                                3 ~ 3.5 (T-Vectorとの合計が4 microLになるように)
     2x Quick Ligase buffer   4.5
     Quick Ligase                   0.5
                                                                   
      TOTAL                            9 (microL)

よく混ぜた後、室温で5 ~ 10分間反応させる(長時間の反応は後の形質転換効率を下げて
しまうので行いません)。

氷上に置いて冷やす。
(高温での失活処理は行なってはいけません。形質転換効率を下げてしまいます。)

コンピテントセルに加えて形質転換を行う。

反応時間が早く効率もいいです。ちなみに酵素を間違ってT4 Ligaseで反応させてしまった場合でもうまくいきました。バッファーが重要なのかもしれません。

Blunt/TA Ligase Master Mix, Instant Sticky End Master Mix
両方ともLigaseとバッファーが混合されたマスターミックスです。以下はTA Ligase Master Mixを使った方法です。

[試薬]
     Blunt/TA Ligase Master Mix (NEB)
     T-vector
     PCR 産物 (精製したもの)

[Ligation反応]
    1.5mL tube (PCRチューブでもよい)に調整

      T-Vector (100ng/uL)          1
      DNA                                  4
      TA Ligase Master Mix       5
                                                                     
       TOTAL                          10 (microL)

よく混ぜた後、室温で15分反応させる(長時間の反応は後の形質転換効率を下げてしまうので行いません)。

氷上に置いて冷やす。
(高温での失活処理は行なってはいけません。形質転換効率を下げてしまいます。)

コンピテントセルに加えて形質転換を行う。

僕はこれのサンプル品を使ったのですが、1液タイプのため非常に使いやすくライゲーション効率も良かったです。1回に5μLも消費してしまうのはもったいないので(効率が良いのでライゲーションが成功した大腸菌のコロニーが生えすぎる)全てを半量にして反応を行っても良いかもしれません。

PCR産物のTAクローニングしか行ったことはありませんがBlunt endのライゲーションにも適用できます。Instant Sticky End Master Mixのほうは制限酵素処理したDNAのライゲーション用に調整されたマスターミックスです。高くて両方買えない時にはとりあえずInstant Sticky End Master Mixの方を買っておけばTAクローニングにも使えるようです。使い方はいっしょです。

以上3つの製品について紹介しました。何かNEBの回し者のようになってしまいましたが、はじめの方にも書いたようにライゲーション酵素の好みは人それぞれです。自分が行っている実験系でうまく働く酵素を見つけておけば後々役に立つでしょう。 

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