Saturday, December 7, 2013

SONY EC800 セルアナライザー

ゲノム研究分野 共同利用機器紹介-(6)

もう1つのSONY、職人気質のセルアナライザー EC800


以前紹介したSONYのセルソーター(SH800)と同時期にもう一台SONYの機器が導入されました。セルアナライザーと呼ばれるこの機器はセルソーターと同じくフローサイトメーターに分類される測定機器です。セルソーターは欲しい細胞を分取してくれますが、こちらの機器は分取はせずただひたすらに細胞を分類しカウントします。本装置は4色のレーザーを搭載しており一度に6色の蛍光で細胞を分類できます。

研究の種類によってはソーティングの必要がなく、ある細胞群の中に特定の種類の細胞がどれくらいの割合で入ってるのかを知りたい場合が多くあります。白血病の患者さんの血液中の各血球の割合を知りたい場合などがそうです。ある薬剤を使った場合に特定の細胞が増加した、または減少した、等も調べることができます。実際の研究現場においてはセルソーティングよりもセルアナライジングのほうが多用されます。

この装置、見てもらうとわかりますが前述のセルソーター(SH800)に比べるとずいぶん野暮ったい感じのする外観をしています。SONYの製品にしては無骨なスタイルを持つこの装置は実はSONYがデザインしたものではありません。SONYはフローサイトメーター部門を立ち上げるにあたってアメリカのi-Cyt(アイサイト)社を買収しました。すでにこの装置はi-Cyt社で完成されておりそれをSONYブランドで販売しています。以前デモで本装置をゲノム研究分野に持ってきてもらった時はまだi-Cytのロゴがついていました。

溶液タンクにはまだiCytのロゴが見える。

この機器も前述のSH800と同じく全自動の立ち上げを売りにしています。そもそもセルアナライザーでは細胞の分取が必要ないためレーザーの光軸調整以外の調整は必要ありません。現在販売されているアナライザーの多くはレーザー光軸調整が不要なものが多く、本製品も光軸調整は必要ありません。装置の起動時は全自動で流路が洗浄されるので引き続き感度調整用の付属の溶液(蛍光ビーズが入っている)をセットし自動感度調整を行います。これらの機能はそれほど他社製品と差はありません。

ここにサンプルをセット。40本まで。
蛍光フィルター部。

この装置の一番の売りは複数サンプルの自動測定機能と蛍光感度の再調整機能です。最大40サンプルを連続して自動で測定してくれるのでサンプルをセットしてスタートボタンを押し、そのまま放っておくことができます。測定後に装置のシャットダウンも行うように設定もできます。測定開始後そのまま研究室へ戻り数時間後に戻ってくれば測定が終了して装置内の流路の洗浄も終わり、電源も切れているので自分のサンプルとデータだけを回収して帰るという使い方ができます。忙しい方には時間の節約ができる良い装置ではないでしょうか。

またフローサイトメーターでは蛍光の測定強度を自分のサンプルに合わせて調整する必要がありますが、本装置では画面上の測定範囲よりも幅広い範囲で勝手に測定してくれるので万が一感度の調整が不適切だった場合でも測定後に再調整が可能です(多くの他社製装置では測定時の感度調整が不適切だった場合は測りなおしになります)。特にいつも同様の細胞を同様の蛍光で測定する事が多い場合では、自分の測定条件のテンプレートを予め作っておけば毎回の調整は必ずしも必要でなくなります。これも利用者が測定をすぐに開始できるようにするためによく考えられた機能だと思います。

解析画面。


この装置は無骨な外観ですがセルアナライザーとしての機能はとても洗練されていて、僕はこの装置に無口で人当たりは良くないが腕の良い職人のような印象を持っています。先日履いていた革靴のつま先が靴底から剥がれてしまい、修理に出しました。人通りの多い通りの商店と商店の間に挟まるようにしてあった修理屋の主人は工具でびっしり囲まれた狭い店内から出てきて修理の説明をしてくれました。「うちは接着剤は使わずに縫って直すから時間がかかる、苗字だけおしえて。」といって僕の苗字だけを聞き、僕は支払いをして帰りました。数日後戻ってきた靴はしっかりと綺麗に修理されていました。まったくもって関係ない話ですが、そんな感じの信頼できる装置だと思います。

ゲノム研究分野では専門の職員が本機器のメンテナンスと使用方法の説明を行います。遠慮無くいろいろご相談ください。

設置場所:ゲノム研究棟 3階 306号室 

利用料金:現在のところ無料でお使いいただけます。1月から利用料金(500円/1使用)を頂きます。 

詳しくはゲノム研究分野 管理室まで (内線 3174、Eメール mgrc@gifu-u.ac.jp)         

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