Saturday, December 7, 2013

ゼネラル・エレクトリック (GE) IN Cell Analyzer 2200 イメージングサイトメーター

ゲノム研究分野 共同利用機器紹介-(2)


細胞構造の大規模解析にどうぞ IN Cell Analyzer 2200


「ジェットエンジンから電球までつくります」でお馴染みのアメリカGE社が「イメージングサイトメーター」という聞いたことのないカテゴリーの製品を作ってきました。サイトメーターとは一般的にフローサイトメーターのことを指します。フロー(水流)・サイトメーター(細胞の測定)という名前からわかるようにフローサイトメーターは細胞を溶液ごと装置内へ流してカウントしたり性質ごとに分類して解析する装置です。以前の本欄で紹介したソニーのセルソーターもフローサイトメーターのカテゴリーに含まれます。

一方で本機のようなイメージング(撮影)・サイトメーターとはどういう機械でしょうか。前述のフローサイトメーターは細胞を溶液内で浮遊状態にしてレーザーを当てて細胞を解析します。したがって血液細胞など浮遊している細胞はそのまま測定できますが、シャーレの底に張り付いて増殖する付着性の細胞(線維芽細胞など)は一旦シャーレから剥がして酵素処理により細胞を1個ずつバラバラにして浮遊状態にしてから測定する必要があります。増殖中はシャーレに張り付いて平べったく伸展していた細胞はバラバラになると丸い球状に形が変化してしまいます。これではこの細胞があるべき姿で測定できません。イメージングサイトメーターはフローサイトメーターのこの欠点を解消すべく開発されました。

本装置は培養状態の付着性細胞をそのまま高精度カメラで撮影し、撮影された画像からソフトウェアが細胞の位置を判定し数をカウントしたり細胞内の構造の特徴を検出して数値化します。例えば個々の細胞の大きさやミトコンドリアの数、神経細胞の場合では伸びている軸索の長さなどを個々の細胞について測定し統計処理を行ってくれます。フローサイトメーターでは失われていたこれらの情報をイメージングサイトメーターは余すことなく測定してくれます。

ここが開いて
こうなる。
装置の大きな外観に反して内部の基本設計は至って簡単です。本装置の心臓部は顕微鏡です。外からは見えませんが内部には高性能の蛍光顕微鏡と半導体光源が入っています。装 置の開口部は1箇所のみでここから培養細胞が入ったプレートを内部に挿入します。装置全体が暗室の役目も果たします。操作はすべてコンピューター画面上で行い、焦点もレーザー測距によって自動で調整されます。本装置には8つの異なる波長を出す半導体光源が搭載されていて任意の蛍光抗体を励起して高性能CMOSカメラが蛍光像を撮影します。同時に明視野像も撮影することができます。撮影された画像を専用解析ソフトに転送し解析を行います。以下では培養細胞を固定処理して蛍光抗体で染色し特定の細胞小器官(例えばリソソーム)を解析し、細胞あたりのリソソームの数を統計処理する方法を例に説明します。


利用者はまず細胞を24穴(ウェル)プレートや96穴プレートなどの汎用規格サイズの培養プレート内で細胞を培養します。固定液で処理し、リソソームを認識する抗体と蛍光2次抗体で染色を施します。細胞位置の指標となる核をDAPIやPIなどの蛍光色素で染色します。画面上で操作してプレートを装置内にセットします(ボタンをクリックすると自動で挿入口が開くので挿入口のラベルに従ってプレートを置きます)。画面上で操作するとプレートは自動で装置内に引きこまれます。次に測定ソフトウェアに自分が使用しているプレートの情報を読み込みます。ウェルの位置や底の厚みが同じ96ウェルプレートでもメーカーごとに少しずつ異なるので別のメーカーのもので設定すると画像がきちんと撮影できません(予めよく使われるメーカーのプレート情報はソフトウェア内のリストに入っています)。次に測定したい蛍光の波長、測定を行うプレート内のウェルを指定して(96穴全てを連続で撮影することもできます)撮影をスタートすると設定した通りにに撮影が自動で行われます。1ウェルあたり複数箇所を撮影してあとでウェルごとに1枚の画像にすることもできます。

プレートを入れる所。左上にプレートのA1ウェルが来るようにセット。


次に撮影した映像を解析用のソフトで開いて解析方法を設定し(この場合は細胞の数とそれぞれの細胞内のリソソームの数を数えるように設定します)、解析を開始します。コンピューター内で画像情報を解読してそれらの値が自動ではじき出されます。結果、例えば全部で1052個の細胞をカウントし1細胞あたりのリソソーム数の平均が75個だったなどの計算してくれます。1ウェルごとに異なる薬剤で処理して測定することで有意にリソソームの数が減ったウェルを特定し、リソソームの形成に影響を与える薬剤を探しだすといった用途にも使えます。リソソーム以外にも神経軸索の伸長に影響を与える薬剤を調べたり、特定のタンパク質の合成を阻害するmicroRNAをスクリーニングするといったこともできます。

装置本体はシンプルで利用者は電源スイッチを押すときとサンプルプレートを入れる時以外は本体に触れることはありません。ただ残念ながら、測定・解析用ソフトウェアの操作性は決して良いとはいえません。直感的に操作ができるように設計されていないので使い始めは必ず知っている人に教えてもらう必要があります。ゲノム研究分野では専門のスタッフが測定方法と解析方法についてフォローさせてもらいます。またGEに電話で相談したり、GEとコンピューター画面を共有してその場で解析方法を相談することもできます。

操作画面。

規格プレート以外にもスライドガラス観察にも対応しているのでスライドガラス上に張り付けた細胞を染色して測定したり、染色した切片を明視野や蛍光で観察・測定することも可能です。しかしながら培養でよく使われる丸いディッシュには対応していません(GEによればサードパーティ製のアダプターがあるらしいのですが・・)。GEさん、それらも使える純正のアダプターを出してくれることを強く望みます(付属品だとなお良い)。また規格プレートについても予めプレート情報が登録されている製品は限られるため、自分でプレート情報(寸法、底の厚み等)を装置に登録する必要があります(これがかなり面倒です)。GEが提供している本装置のWebページ上の利用者フォーラムで他の利用者がプレート情報を提供していることがあるらしいのでそれらを利用することもできるそうです。しかしながらプレート情報くらいはGE側で提供してほしいものです。GEさん、それくらいのサービスはこの装置がメジャーな解析装置になるためにもぜひ行うべきですよ!!先ほどのシャーレ用アダプターも含め、売ったら終わりではなく利用者の立場に立った製品づくりとサポートをお願いします!!

不本意にもGEへの要望丸出しになってしましましたが、イメージングサイトメーターは高精度の写真から利用者が指定した細胞の構造を画像解析ソフトが探し出し解析するシステムのため、指定する構造を色々と工夫することで測定可能なパラメーターはほぼ無限にあると言えます。解析装置としてかなり高いポテンシャルを感じます。操作に慣れるまではゲノム研究分野が全面的に利用のサポートをしますのでぜひ本装置を使ってみてください。ちなみに蛍光撮影ができる顕微鏡としてもかなり高性能ですのでサイトメーターとしてだけではなく蛍光像の撮影にも是非オススメです。実は僕はこの用途で結構使っています。短時間の操作で大量のサンプルの撮影ができるので便利です。こちらもぜひ一度お試しください。

設置場所:ゲノム研究棟 3階 304号室

利用料金:現在のところ無料でお使いいただけます。数カ月後から利用料金(未定)を頂きます。

詳しくはゲノム研究分野 管理室まで (内線 3174、 Eメール mgrc@gifu-u.ac.jp)         

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